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漫画「うえきの法則」と「最遊記」をこよなく愛する管理人、麗凛のまったりなブログ。一緒にまったりしませんか?
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HN:
麗凛
性別:
女性
自己紹介:
「うえきの法則」と「最遊記」を本当にこよなく愛している痛い人間です。最近オタク道を突っ走ってます。腐女子道も……ごにょごにょ。
更新もまったり☆一週間に一度更新されてたら褒めてあげてください。
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★2008/10/02 (Thu)
何かを必死で掴もうとして空をきった手。
何かが足りないと叫んでいる気がした。



空っぽの手の平



ドサリと鞄を置く。リビングの白いソファーに腰掛けた。

何が、あったの?

急いでリモコンを手に取ると迷わずボタンを押した。どこも緊急ニュースをやっ
ているようだ。
『今、世界中で特定の人物の記憶が消失するという事件が起こっています。現在
国はウイルス説や……』
テレビの中でアナウンサーが喋る。形の整った顔が困惑しているのが画面越しに
伝わった。

やっぱり、私の周りだけじゃないんだ。

ゴクリと生唾を飲み込む。今日、うちの学校はケンカが絶えなかった。何故か、
今まで仲の良かった人達がお互いの事を忘れているのだ。
私に自覚はない。けど……私ももう、友達の事を忘れているのかもしれない。
そう思うと、胸の中に嫌な感覚がじわりと広がった。心を落ち着けるために深呼
吸を何度か繰り返す。

大丈夫、大丈夫だから。

暗示をかけるように、何度も心の中で言葉を繰り返した。
堪らなく不安だった。頭がくらくらして、呼吸が荒くなる。


ダメだ。


ぼぅっとした頭に、声が響いた。


強くならなくちゃ。
強く、もう助けて貰わなくてもいいように。


私の声だ。
そうだ、強くならなきゃ。誰にも迷惑、かけちゃいけない。





ぇ…………?





意識が急にはっきりする。頭は少し痛いけれど、気にならなかった。



迷惑、誰にかけたっけ。



強くなりたいとずっと思ってた。2年前頃から急に。




何で……?




一年生の夏休み、何故かヒドイ量の宿題がたまってた。大きな怪我もしていた。




ドクン……




夏の記憶が消えてる…。




「ぁ……」




ドクン ドクンッ……




動悸が激しくなる。
怖い。怖い怖い怖い怖い




「助け…てっ!――…」




あ、れ………?




“助けて”………その後に、何かを…………。
名前、を叫ぼうとして。


出たのは、かすれた息。




ズキィィィィッッ!!
「っつ…………!!」
頭に激痛がはしる。




お願い、忘れさせて。
痛い、苦しい、怖い、




………哀しい。




――約束、破る気……?




え………?




――絶対忘れないんでしょ




また、声がする。
ズキズキする頭の中で、それは鮮明に響いた。





「いやッッ…やめっ……忘れさせてッッッ!!」


――忘れたくないッ!!

ズキィィィィッッ!!!!

さっきよりもヒドイ痛みが私を襲う。
そしてそのまま、気を失った。





――夢を。
どこまでも哀しく
どこまでも寂しく
どこまでも……――


空の蒼と一体化した、傷付いた羽。
遠い空に羽ばたくその背を追いかけていた。
血だらけの後ろ姿。
「待って」と叫び続けながら。

喉が枯れる。
息がきれる。
汗が吹きでる。
体中が痛い。
目がかすむ。

だけど。

構わない。
もう何も失いたくないんだ。

叫び続けるんだ。

止めて。もういいから。



だから…………



澄んだ蒼に少しだけ手が触れる。
緑色がこっちを向いた。

大きく息を吸う。



「消えるな、バカぁっ」












笑顔だった。














「                  」













最後に、その優しすぎる笑顔で。













するりと手が離れる。













何かを、私に言って。














スゥゥッ………………。













「ぁ………………!」
























消えた。




















「イヤァァァァァァァッッッ!!!!!」









夢を。





夢を、見ていた。






ドクン






ドクン ドクン ドクン…






「はぁッはっ…ハァ…」
汗で前髪が額にへばりつく。
さっきよりヒドイ嫌な感覚が胸の辺りをぐるぐる回る。
体がとてつもなく重い。






ユ………メ……………







ゴクン。
生唾を飲み下す。





大丈夫、大丈夫、だいじょうぶダイジョウブダイジョウブ
同じ単語が頭の中を駆け巡った。
そうでもしなければ、恐怖に呑み込まれてしまいそうだ。







悪夢だった。









不安に押し潰されそうな、恐怖に支配された悪い夢。

上半身を起こして、壁にもたれかかる。
ソファーが小さく軋んだ。













蒼色の羽の感触が手に蘇る。
途端に泣きたくなった。



ねぇ、分かってるんだから。
私がこの手を放したら、すぐに飛んで行くんでしょ?自分が死ぬ事なんて考えずに
、最後まで笑って。


私たちを、守るためだけに。


「………ッ!!」


目の前に後ろ姿が鮮明に映し出される。
慌てて伸ばした右手は、虚しく幻を掻き消した。
小さな音をたてて、手が空をきる。

静かに拳を開く。

何も、入っていない。

蒼の欠片は、消えていた。



「ぅわあぁァァッッ!!」



頭が爆発するように痛みだす。
それと同時に、我慢していた涙が溢れ出した。

呼びたい名前があるのに。姿はすぐそこにあるのに。



手が、届かない。





――夏の日だ。


手を伸ばしたのは、あの太陽の下。

どこまでも、飛んで行けると疑わなかった空に。


誰かを守る強さを求めて、走り続けた。


そう、その後ろ姿を私たちは追ったんだ。

ゴールの見えない闇に自ら飛込んだバカを。

私たちを救ったバカを。



大切な人達を守り続けたバカを。



煌めいた緑の瞳。

同じ緑の髪。

意志を秘めて、空へ向かった蒼の翼。




血まみれで、ボロボロ。

傷付いた、




笑顔。













もう一度、ぎしりと音を立てたソファーから飛び起きる。


そこまで知っているのに、何故思い出せない?

一度掴んでもすぐ手からすり抜けていく、記憶の欠片。

無意識に駆け出す。
空っぽの手の平。
喪失感の理由を探す為。


緑色の少年を再び追い掛ける為。


ひとつだけ。
ひとつだけ、小さな蒼の欠片があるはずなんだ。


階段を上がって、手前から2番目のドア。
見慣れた自分の部屋。
開けば、小さなガラスの机があるはずだ。
その上には…――







堪らなく不安な夢。

打ち砕いてくれたのは、いつもみんなだった。

そう、なのに。




「ごめんなさいっ……!」



あの夏が詰まった写真を机の上から手にとる。
小さな滴がその上に溢れ落ちた。




名前を呼ぼうとして、喉がひくつく。

私の口からそれが出てくることはなかった。






――あの夏。


写真の中の私の顔は、みんなと同じで傷だらけだった。



けど、



最高の笑顔がそこにあった。






この世界で一番大切な人達。














なのに。














「ごめんなさいっ………――!!」









何故忘れてしまったのだろう。
何故思い出せないのだろう。



「すぐに、見付けにいくからっ……!!」


おえつを堪えながら呟く。




蒼の欠片を握りしめる。

少しだけ写真に皺がよった。

強く、なるんだ。




空っぽの手の平。

今は失ったばかりだけど

探さなければいけない物を見つけた。

温かな緑色の瞳

傷付いた蒼の羽


今からでも遅くない。


助けにいかなければ。


だから追い掛けるんだ


今まで拾い集めてきた“大切な人との記憶”をもう一度手にする為に。




写真を小さく畳んで制服のポケットに入れる。
目に溜った涙を拭い去る。









そう。

この時私は知らなかったのだ。

駆け出した先に何があるかなんて。







「大丈夫か?」

私に向けられたその一言で、歯車が狂い始めた。
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