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漫画「うえきの法則」と「最遊記」をこよなく愛する管理人、麗凛のまったりなブログ。一緒にまったりしませんか?
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麗凛
性別:
女性
自己紹介:
「うえきの法則」と「最遊記」を本当にこよなく愛している痛い人間です。最近オタク道を突っ走ってます。腐女子道も……ごにょごにょ。
更新もまったり☆一週間に一度更新されてたら褒めてあげてください。
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★2008/09/04 (Thu)

――遠い遠い、この空の果て
   私の知らないコバルトブルー

   君は、それを探し続けてる――


        瞳に映る蒼


バサッ…
視界が一瞬純白に染まる。辺りに石けんのいい香りが広がった。
背伸びして紐につるすと、シーツは嬉しそうにぱたぱたと揺れた。
「ソラ」
また大きなシーツをかごから取り出していると、短めの名前を呼ばれた。少し低めのアルトの声。

振り向かなくても、分かる。

「植木っち!どしたの?」

緑色の三白眼がこっちを向いていた。
「その大きいシーツ俺のと取り替えようか?重いし大変だろ」
植木っちが、自分の持っている小さなシャツの山を差し出す。さっき洗い終わったヤツだ。

くすり、と小さく笑う。

植木っちの、この温かさが好きだ。
ぼーっとしてるようで、一番みんなのことを考えてる。
こんな温かさ、初めてだった。

「ありがとー。でも大丈夫!早く終わらせないと修行始まるよ?」
「ダメだ。取っ替える」
うわー、拒否権全くなし。
でも、そのイヤに真剣な顔が笑える。本当に普段どんなこと考えてるんだろう。
もう一度「ありがとう」と笑うしか、私には選択肢は用意されていないのだ。


それは遠くない昔。
私の周りに、人はいなかった。


だって私は、
だって私は、

ずっとずっと、独りだったから。


ハンバーガーのおじいちゃんに引き取られた時も、そのもっと前も。


おじいちゃんは優しかった。
独りの私にずっと「人」を教えようとしてくれた。
でも、「ずっと」なんて、ないんだよね。頭はいい方だとは思ってたんだけど、ダメだった。知らなかったんだ。
おじいちゃんは、おじいちゃんだもん。人間だもん。
生きてるもん。
死んじゃうもん。
てゆーか、頭がいいんじゃない。
ヘンなことが分かりすぎるんだ。


「お隣のWバーガーさん、孤児院から女の子を引き取ったんですって」
“お隣のWバーガーさん、変な小娘を引き取ったらしいわよ”
「ミルちゃん!早く帰るわよ!!」
“そんな子と一緒にいちゃ、だめよ!”
「ソラちゃん、1人余っちゃったねー」
“だから、こっちにこないで”

ヘンなことが分かりすぎるんだ。
みんな一歩退いて私のことを見ていた。

私が、ヘンだから。


それが、過去形に変わった。


「植木っちー、ハイジっちどこにいるか知らない?」
「ミリーんとこだと思うけど……どうした?」
「えっと、今日の練習メニュー伝えとけって、ナガラっちが」

そういえば私も、いつもみんなの顔色を見ていた。
嫌われないように、必死だった。

「俺がやろうか?ソラまだ昼飯喰ってねーだろ」
「大丈夫だってば。シーツもやって貰ったし」
そう言って、植木っちから受け取ったTシャツのシワを広げる。

今は、こんなに心の底から気遣ってくれる人たちがいる。
今は、呼ぶお解きに躊躇しない名前がある。
今は、しっかり意志を伝えられる事ができる。

「そっか。あ、でも昼飯はさっさと喰えよ!!今日は鯖のみそ煮だぞ!!」
なんとも言えない迫力に、押されて真顔で頷く。植木っち、鯖のみそ煮好きだっけ。……妙に地味なのが植木っちらしい。

ささやかな幸せが、手の届くところにある。
「嫌われたくない」なんて考えなくていい、包み込んでくれる優しさに出会えた。
絶対的な安心。

知らなかった言葉を1つずつ教えて貰った。

「あ、そだ。今日の練習メニュー、何だ?」
「えっと、植木っちはモップコントロールで、ハイジっちは……」
少し自身のある記憶力を頼りに、指を折りながら言う。
「あ、あとね!メガサイトの説明があるっぽいよー」


ふわり


そんな擬音が似合いそうな。


私が、「メガサイト」って言った瞬間だった。


ふわり、と。




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